h.Tsuchiya

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昭和爺のカタルシス

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今夜『鬼平犯科帳』のおそらく最後の番組をYouTubeで観た。老衰した吉右衛門をカッコ良く送る花道なのだろう。黄門物よりキレが良く、捕り物話より知的で、ちゃんと型を持った時代物がまた消えた。もうこの手のカタルシス(浄化)話は作れまい。原作も考証も脇役も裏方も居ないから……あぁ、余生が詰まらんぞ!

 

少しフライングの観梅

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昨日、友達と梅が丘の羽根木公園に出かけた。白加賀、大盃、淡路しだれとなど各種の梅の木が600本以上。加賀の名は前田の家紋(梅鉢)ゆかりだろう。淡いピンクの「えんおう」というのもあった。「鴛鴦(おしどり)」だろう。夫婦愛の象徴でもある。後で調べたら必ず2輪づつ揃って咲くからだという。時期が少し早かったようでここの「梅まつり」はさ来週から。でも「花よりなんとか」で、地元鮨屋の弁当&ビールで満喫した。

女は弱しされど母は強し

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ヴィクトルユーゴーの至言。また芥川龍之介も『あばばば』の中で「女はもう『あの女』ではない。度胸の好いい母の一人である。一たび子の為になつたが最後、古来いかなる悪事をも犯した、恐ろしい『母』の一人である。この変化は勿論女の為にはあらゆる祝福を与へても好い」と書いている。でも先日来、澤穂希の出産とか柔道の”野獣”松本も妊娠発表なんて聞くと、元から強い女が母になると、どれほど強くなるかと、恐ろしくもあり、楽しみでもある。

仕事選べよキティちゃん

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晋の武帝は好色かつズボラだった。後宮を羊に曳かせた車で巡り今宵の相手は羊まかせだった。ある賢い女が部屋の前に羊の好む塩と笹の葉を置いて寵愛をゲット。これが水商売の店頭に置かれる「盛り塩」の由来(お清めとは無縁!) 先日「キティちゃんの『盛り塩キット』」(3800円)が売り出されたとか。少しは仕事を選べよキティちゃん、と爺は言いたい。

「盛り塩」のことを wikipediaで早わかりするのもいいけど、読書で見つける愉しさが得難い。この逸話は陳舜臣『小説十八史略』の4巻目にある。「始皇帝が牛の車に乗って」という説もあり、こちらで記事にしたことがあったが、陳さんの説を採れば良かったと反省。塩でも撒くか

風呂吹き大根

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冬の季語「風呂吹き大根」はなぜ「風呂焚き」でないのか?昔、漆乾燥促進用の「漆風呂」で冬季に大根の茹で汁を吹きかけたのが語源とか。ともかく美味さのカギは味噌にあると思い、八丁味噌ゴマ油、山椒粉、柚子粉、一味などわが家の調味料総動員。香りと見た目で「先味」を愉しんだ。豆もそうだが、昔の料理は熾火でコトコト煮るものが多い。燃料費の節約を旨としたからだろう。

67歳の地図?

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今日の報道。昨年の「老人福祉・介護事業」倒産は、これまで最多の108件と急増した。中上健次の「十九歳の地図」をパロって「67歳の地図」という仮想小説を考えた。ディサービス会社で要介護老人たちを施設に送迎する運転手の爺が主役で、老人を適切にケアしていない家をノートの地図に「×」印をつける。そして「天誅」を開始するのだ。……これ、仮想話ではないかも。怒れ!事業者たち。(3年前に書いたブログ記事をアレンジ)

コトバの力

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 昨年末、文春から司馬遼太郎の新書が出た。といっても60年以上前に書いた軽い随筆。この人のお陰で永いこと飯が喰えた連中が、まだダシガラをしゃぶるのはみっともない。作家は時代や人間のよく見えぬ部分を抉り出すコトバの力を知っている。同時にその限界も。墓の下で彼は「もう賞味期限切れだ」と苦笑している気がする。でも司馬のコトバで今でもおもしろいのがある。「ほとんどの人は永く生きたつもりでいながら、じつは語るに足るほどの体験は数件ほどもない。短編小説として絞りとれば三編もできあがらない」(『風塵抄』)。まったくそう想う。