h.Tsuchiya

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「あのう」でもいいじゃん?

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 これはあくまで架空の会社の話だが、入社して間もな営業マンが客先に営業電話をかけていると思ってほしい。電話による飛び込みセールスだ。彼は波長の合う客だと、えらく能弁になり、結果は受注できなくても楽しそうに話している。だが、波長の合わない客だと、妙に焦る。早口になって趣旨がなかなか伝わらない。「あのう~なんとかかんとか」「あの~それでですね」とやたらと「あの~」が出る。でも、彼の口癖であり、場つなぎの、調整の息継ぎ程度のもので、ボクなどはほとんど気にもならない。しかし、彼の業績不振を、自分のせいにされたくない直属上司にはひどく気に障るらしい。電話している傍で「『あの~』というな、『あの~』は止めろ」と盛んに指示を出す。すると彼はますます焦りまくって、さっきよりもっと「あの~」が出てしまう。なんという悲喜劇だとボクは心の中でゲラゲラ笑っている。そんなことを指図するよりほかにもっと指示することはあるはずだ。ちゃんとした見込み客リストを渡し、言うべきポイントをマニュアル化し、何度かローププレイングしてあげる……等々。そしてまずは自信を持たせてあげるのが管理職の才覚だろうに……。

 これに類したおバカっぽいことが年がら年中、世界中のあちこちで、きっと延々と繰り返されてきたに違いない。人間なんて全然進化してないのだから。エジプトのピラミッド工事で、古代中国のある王朝で、日本の戦国時代で、大阪船場の商家で、そして先の大戦の決戦場で、今日の政党集会で……。くだらぬ悲喜劇に巻き込まれて、やる気も能力も失せた人物の屍はきっとものすごい数、死屍累々のはず。

 他人ごとではない。誰かと一緒に何かをやろうとするとき、きっとこういうバカな指示を出すこともあれば、出されることあるに違いない。繰り返すが、所詮、バカな次元のことである。

 ボクらのように齢喰ってくると、「あの~」「その~」なんて何も気にならない。それよりも固有名詞をどんどん忘れるから何でも「あれが~」「これが~」「何が、ほら、ほら」とやる会話ばかりになる。これはこれでトホホな話だね。「あの~」くらい大目に見てあげようよ。

「あの~」つながりで書くが、山崎ハコのうたに『ANOU』がある。こちらは、「あの~、ボクを炒りませんか~♪」という不思議な歌詞。いいたいことは、「自分を必要としてくれる人」を探し求める恋情だ。やはり、この人は天才かも、とあらためて思う。