h.Tsuchiya

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ああ、蠢動の季節

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「梅は咲いた~か、桜はまだかいな♪」とは江戸の端唄だが、Metisとかいう女性歌手が、ラップのようなノリで歌の出だしにも使ている(でも、下手だし、ヘンに声を張るだけでハートに届かない残念な歌。卒業歌狙いかも?)。それはともかく、家の近くの公
園に1本だけある梅の枝が、まっ白になったのを見ると、つい口をついて出てしまうのは、下々の素養だぜ。でも、今年も世田谷梅ヶ丘の見事な梅林を見に行きそびれた。なんてこった。仕事休んでも行くべきだったと後悔。

 下々の素養として、もう一つ思い出すのは「蠢動(しゅんどう」という、見ただけでもムズムズしてくるような言葉。本来は春になって虫が穴から出てきて(啓蟄)、うごめきだすことなんだが、ネガティブな意味としては、「虫のように力もない、くださらないものが、何事か、身に過ぎるようなことを考えて画策する」とでも言うようなニュアンスにもなる。これから封切りになる映画で。同題のものがあるらしい。評論によると、かつての日本映画の名作『切腹』に比肩するほどの、すんばらしいサムライ映画らしいが、ホントかいな? 多分、こちらは後者の意味なんだろう。全然、確かめもしないで言っているけど……。

 それにしてもすごい漢字だ。「蠢く(うごめく)」とも読む。こういう部首を合成してつくられた会意文字は、日本製の「国字」である場合も多いのだけど、「峠(とうげ)」とかね。これはちゃんと簡体字にもあるようだし、「春」と同じく「チュン」と読むらしいから漢字に間違いない。英語ではWriggleというのが相当するかも。でも「she wriggled her hips」と言ったら、「彼女は腰をくねらせた」と、とってもヒワイになる。「くねくね」でしかない。ミミズの動きみたい。「蠢動」の深いニュアンスを伝えるには、これじゃまずいだる。

 梅もみてなきゃ、毛虫の蠢動もみてない。ましてや女の「くねくね」も観てない。そんなこんなで、すぐに季節が過ぎる。東京では沈丁花の匂いがするのが先だっただったか、桜が咲きだすのが先だったか忘れたが、あと数日のことだろう。あぁ、歳月人を待たず。着棄てられる重たいジャケットのように、時の流れの中に、ジジイが一人、脱ぎ捨てられる感がある。自分も腰をくねくねさせて、「まだ、まだ生きとるんじゃ~」と主張してみようかな。はぁ、むなし。