h.Tsuchiya

My NEWS

「春雨じゃ濡れて参ろう」考

f:id:RIPEkun:20150329182722p:plain

 昔の映画や新国劇月形半平太』で、出てくる有名なせりふ。実在の土佐藩士・武市瑞山(通称 武市半平太)が、三条の宿を出るときに、舞妓の雛菊が「月様、雨が……」と傘をさしかけてくる時に言う。この意味は、「春の雨はやさしいし、濡れたところで寒くははないから、傘はいらないよ」ということだと考える人が多い。ボクもそう思う。だからさっき、スーパーへ買い物に行く時も、一人でブツブツ。ま、誰も「ハルさま、雨が」とは言ってくれないんだけど。少なくともボクら以上の年代は良く知っている言葉だ。役者が額に月形の傷跡をつけるのもお約束。その後のテレビドラマでも、この演出はずいぶんパクられたね。

 だが、金田一春彦という国語学者は、「これは春の京都に多い霧雨なので、傘をさしたところで濡れてしまう」という意味だと解する。変人のおもしろ学者だから、こんな興ざましなコメントも許せる。でも、京都に限らず、東京でも4月半ばから5月にかけては霧雨がよく降る。「霧雨」というよりも「こぬか雨」の方がしっくりくるんだけど……。

 それよりも問題は、月形半平太こと武市半平太である。坂本竜馬山内容堂酔鯨公)のことを知る人なら、彼がそんなロマンチックなセリフをいう男だと思うかな? 土佐勤王党を結成し、山脇東洋を殺して土佐藩尊王攘夷に導いた功績はあったものの最後は藩主命令で切腹だ。人物としてはきまじめ、身長は180ぐらい、色白の恰幅いい男だったとは言われるが、愛妻家でもあった。だから、映画や新国劇のような色っぽい話とはまるで無縁だとおもうけどなぁ。

 ま、今、NHKでやっている『花燃ゆ』とかいうの大嘘だらけという。実在した3人姉妹の中には、もっとドラマチックな女性もいたというのに、その存在すら消されているらしい(見てないからわからんけど)。作り物はしょせん、作り物。でも「春の雨」が季語のようになるほどの影響力があったのだから、と考えると、こうしてブツクサ言いたくもなる。