h.Tsuchiya

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ステージ芸の魔力

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「毎日が日曜日」状態に戻った記念(?)に、久々に近所のスナックへ出かけてゆっくり呑んだのだが、居合わせた客からコンサートのチケットをもらった。「明日の夕方からだが、行けたらどうぞ」と、数人に配っていた。出るのは「キム・ヨンジャ」他とある。「へぇ、あの韓国人歌手か。詐欺だか麻薬だかで国に帰ったまま、来日できなかった。本人は日本に来たがっているという……」と思ったが、これは間違い。そちらは桂銀淑(ケイウンスク)で、独特のハスキーボイスの人だ。こちらは、漢字表記で金蓮子と書かれた人だ、と思い出した。だいぶ前に見たTVでは、美空ひばりとか、他の人の曲をカバーしていた印象しかなかった。これという歌が思い出せない。ちょっと迷ったが、チケットをよく見れば額面6,500円のSS席、それがタダなのだから、ありがたくいただくことにした。どうせ「毎日が日曜日」なのだ。かといって、家でくすぶっているのは、どうも性に合わない。

 会場は新宿文化センタ―。家から歩いてもさほど遠くない。開場時間ちょうどについてみると、すでに一杯の人。ほとんどが60代のおばさん。韓流ブームを支えた連中であり、今年56歳のこの歌手の熱心な追っかけだったろう。その人間観察も面白いのだが、この頃は、いたずらに好奇心を働かせないと肝に銘じているので(理由はないけど)、早めにシートに。入りは4割弱かな1,000人程度。スナックの連中は誰もいなかった。

 前座は二人。最初は「響あゆみ」なる演歌歌手。16歳で歌手を目指して大分から上京したのが平成2年(1990年)というから芸歴25年。さすがに舞台なれしているし、唄も上手い。ちょっと民謡風に唄う相撲甚句は、キャリアで培ったサービス精神からか……てなことを思っているうちに30分で終了。次が、「REIKO」なる正体不明のタレント。子役、モデルみたいなことをしながら育って、『黒蜥蜴』の舞台にも出て、今はミュージカルの勉強もしているうんぬんとの紹介。あ、この司会は、お天気キャスターでTVに出ている松波なにがしなる人。見たことあるようなないような、アルバイト感丸出し。その紹介で、「妖艶、華麗な歌手兼俳優をめざします」とあったが、冒頭から、古い外国の歌を続けて披露。まったく空気が読めてない進行、場にそぐわぬキャラ感。せっかく前座が盛り上げかけた空気をさましてくれたが、本人は、唄って体をぎこちなくくねらせるので精一杯。やせた肩を露出しているのも痛々しかった。あまりの中途半端さに「ダメだ、こりゃ」と思ったのは、ボクだけだろうか。やはり30分ほどで終了。

 休憩のあと、いよいよオオトリのキム・ヨンジャ登場。元気の良いおばちゃんって感じ。愛嬌が売りのようで、本人は都はるみ美空ひばりに憧れているというが、むしろ松山恵子を少しそそっかしくしたような芸風。オバサンにはこの方が受けが良い。芸歴40年オーバーで、唄いかたは、声量自慢の熱唱型。韓国だとトロットという典型的な演歌風らしい。あとで調べてみると、『朝の国から』という歌で、ソウルオリンピック閉会式に唄ったらしい。朝鮮=朝の国。(作詞、作曲は日本人だけど)。ま、色々感じたことはあるんだが、子供の作文みたいになってきたんで、疲れた。それよりもほぼ2時間にわたり、タイプの違う3人のステージを観ながら、ずっと考えていた「ステージ芸の魔力」ということだけ書いておこう。

 バックバンドを従えて、華やかな衣装と、めくるめく照明、声一つ、歌一つで観客を魅了する「ステージ芸」は、たぶん、一度はまったら止められない魔力を持っているのだろう。これにとり憑かれてしまった芸人(歌手も舞台俳優、奇術家、ある種の興業スポーツなどの”投げ銭芸人”)は、おそらく人類発祥の頃からいたに違いない。でも、これからも続くのかは??だ。ネット時代はアナログ芸を葬ってしまう可能性がある。……ふだん、コンサートや舞台などには行かないだけに、妙に新鮮な印象だった。このテーマは、また書くかもしれない。