h.Tsuchiya

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たまには漫画もいいよね

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 この頃は、お金を出して本を買うことがほとんどない。ネットの無料図書館「青空文庫」のものをAmazonKindleで読んでいる。でも、一昨日、珍しく紀伊国屋まで出向いてきれいな本を2冊も買ってしまった。杉浦日向子(すぎうらひなこ)の漫画「百日紅さるすべり)」上下巻(ちくま文庫)。元本は1987年に単行本化されたものだからずいぶん古い。作者の、29際の時の作品だ。話は、浮世絵師北斎の三女で、父であり師匠でもある北斎の暮らしと画業を支えた人が主人公。恋に不器用で男っ気はなし。父に「半人前」と言われながらも、絵を描くことをあきらめない強い女。でも、ひそかに想う男はいる……。

 杉浦日向子は、クイズ番組やNHKお江戸でござる」に出ていたのを見ていた。後に、奇人の博物学荒俣宏と結婚したのには驚いた。でも、2005年に47歳の若さで亡くなったのにも驚いた。江戸を題材にした漫画やエッセイはみな面白かった。自身が東京の呉服屋の娘だったし、考証家・稲垣史生の弟子だっただけに、とくに庶民の風俗には詳しかった。そして、この漫画の主人公「お栄」には彼女自身が投影されている。画力よりも語りと余韻で読ませる漫画だと思った。

 近頃、「江戸しぐさ」なるうさんくさい話をでっちあげて稼ぎ、道徳教科書まで浸食しているNPO法人の越川某女史や桐山某などが、やっと化けの皮をはがされつつあるが、彼女が生きていたら、こんなバカ騒ぎすら起きなかったと思える。

 本をめったに買わないのに、なぜこれを今買ったのかというと、ミーハー気分だ。6月20日に、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、日本の原恵一監督の「百日紅 Miss HOKUSAI」が長編部門の審査員賞を受賞したというニュースを見たからだ。YouTubeでその予告編を見たが、原作と比較して確かめたくなった。主人公「お栄」の感じも出ているし、たくさんのエピソードがちゃんと盛り込まれているようだ。(まだ、予告と断片しか観れないが)。レベルとしては、大友克洋の“八百屋お七の大火”を題材にしたアニメ「火要鎮」と同じくらい良さそうな出来だ。

 彼女の本は、手元には「一日江戸人」1冊しかないが、「百日紅」に刺激されたせいで、「百物語」とか「東京エデン」とかも買いたくなった。ちょっとしたマイブーム。それに季節は夏。まさに「百日紅」の紅い花が一斉に咲き出す。余談だがこの当て字は中国由来らしい。日本人は「猿すべり」と書いた(実際には猿は滑らんだろうが)。色気が全然違うなぁ。