h.Tsuchiya

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「一朶(いちだ)の雲を目指し」

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 NHK司馬遼太郎の『坂の上の雲」をドラマ化し、3年がかりで放映したのは、2009年から2011年だった。その主題歌「スタンドアロン」は、何度も聴かされるうちに、曲としてはすごく気に入った。でも、歌詞がこなれていなかった。作詞者は、原作をどうも人生の教科書のように読んだように思える。歌詞に取り入れた言葉としては、「凛として旅立つ、一朶(いちだ)雲を目指し~♪」の部分だけが良かったと思う。

 それにしても、このドラマとテーマソングは、あの2011年に視聴した時が一番良かったと思う。なんといっても「日本海海戦」の回だったから。それと、3月11日の東北大震災のあった年でもあったから、日本人すべてが勇気を奮い起こそうという世論もあったからだと思う。

 
 原作『坂の上の雲』については、歴史的事実に関する誤謬や恣意的解釈を批判する人も多いが、大局的な評価としては、やはり自分と同年代の関川夏央の『「坂の上の雲」と日本人』(文春文庫)が一番共感できる。司馬という作家は、ともかく説話語りなのだから、「細けぇことは、ええねん」と思って読むのがちょうどいいのだ。『竜馬が行く」なんて、そういうものだった。

 さて、このNHKドラマから4年目。今、日本人は、「凛として旅立つ、一朶(いちだ)雲を目指し~♪」という気概を持ち続けているだろうか? この「まことに小さな国」を背負っているだろうか? あの明治の「明るさ」を見出しているだろうか? 世界を相手にしようといるだろうか? 雲だけを見つめて坂をのぼっているだろうか?…… 

 公務員は利益もあげていないのに「賞与」をもらい、人事院勧告による昇給を当然のように受け入れている。一部上場企業と、圧倒的多数の中小・零細企業の社員所得差は開くばかりである。この冬の「モチ代、炭代」さえもらえないサラリーマン、パートタイマーは、数百万人もいる。