h.Tsuchiya

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「物ごころつく」前頃の記憶

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 親や家の外にある「世間」の仕組みらしきものに気づ年頃を「物ごころつく」という。それより前の、つまり7~8歳ぐらいまでの記憶は幼すぎて、いろんなことをよく覚えているようでも、とても限定的な範囲のものだろう。

 自分の場合、1950年代の前半がそれにあたる。世界的には戦後の激動期、冷戦構造ができた時代である。この前年に中華人民共和国が生まれ、朝鮮戦争がはじまり、サンフランシスコで単独講和条約が結ばれ、米国では赤狩りマッカーシズム)の嵐が吹き荒れた。NHK独占だった放送事業に民間が進出、T山本富士子が第1回ミス日本に、金閣寺、放火により焼失、池田勇人蔵相が国会で「貧乏人は麦を食え」と発言、韓国、李承晩ライン設定、血のメーデー事件、永谷園「お茶漬け海苔」発売、・スターリン死去、DNAの二重らせん構造が決定、奄美群島が日本に返還……等々、わずか数年にびっくりするようなことが次々起きていた。でもこれを知ったのは、もっとずっと後のことだ。自分は、確かに生きていたのに、まったく記憶がない。同時代感がない。

 こういう不思議な感覚は、誰だって、何時だってあるはず。だから、その「失われた記憶」が気になる。そして過去を客観的に振り返ろうとする。やっとここで知性が目覚める。

 この2016年の今、春休みに「物ごころつく」年頃になる子供たちも多いだろう。だが、あと数年もしたら、自分の「失われた記憶」に目覚める。その時に、たっぷりおもしろく歴史を語ってあげれば、きっと賢い子や孫が育つだろう。