h.Tsuchiya

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爺飯27 ビスケット

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 食育では「おやつは第4の食事」と重視するが、ジジババにはただの「口すさび」。漱石は英字ビスケットをよく食べた。できの悪い学生の答案を採点しながら「(荻生)徂徠は炒豆を齧って古人を罵るは天下の快事なりといったが、自分は、ビスケットをかじって学生を罵るは天下の不愉快なり」と愚痴った。その弟子・内田百閒も朝食はこれと牛乳。でも「IやLは画が少ないので歯ごたえがない、BやGはたいがい腹が潰れて一塊りになっているから口の中でもそもそする」とぼやく。一方、「ビスケットには固さと、軽さと、適度の薄さが、絶対に必要であって、また、噛むとカッチリ固いくせに脆く、細かな雲母状の粉が散って、胸や膝にこぼれるようでなくてはならない……」とビスケットの「あるべき姿(ゾルレン)」を600字余りも費やして熱く語るのは、鴎外の娘・森茉莉だった。ビスケットは奥が深いなぁ。