h.Tsuchiya

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爺歌41 黄昏時の『プレイバック part2』

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 狭くて柱の多い駐車場でその事故は起きた。でかい「ヴェルファイア」がバックして柱の角に後部をぶつけたのだ。県外ナンバーで運転していたのは40歳ぐらいの小柄な女性。ペコリと凹んだ後部ドアを見て「はぁ、買ったばっかりなのに……」と溜息。何しろ慣れぬ場所、慣れぬ車、しかも「黄昏(誰そ彼刻)」だから自損事故が起きやすい条件はそろっていた。
 現場に居合わせたワシの頭に浮かんだのが百恵の『プレイバック part2』(1978)。「交差点では隣りの車がミラーこすったと♪怒鳴っているから、私もついつい大声になる♪……坊や いったい何を教わって来たの 私だって 私だって 疲れるわ♪」。歌は「真っ赤なポルシェ」に乗る女が、別れたばかりの若い男への苛立ちをうたう。同名の『part1』 を継いだ気分と分かる。……百恵がロマンスものから大人の女をうたって全盛期を迎えたのは、阿木燿子・宇崎竜童コンビの曲に会ったからだろう。この頃の阿木の才能は、神がかっていた気がする。時代の気分と百恵の「深キャラ」がマッチして、ことばが妙に心に刺さった。柱がクルマに刺さった女は、その後どうしただろう?