h.Tsuchiya

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「表現しなけりゃ生きられない」人たち

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 東京ドームに「ギャラリー・アーモ」なる画廊があるなんて知らなかった。わざわざ出向いたのは話題のキューレーター・櫛野展正(くしの・のぶまさ)による『アウトサイド・ジャパン展』を観るためだった。あるサイトの紹介によると、「日本ではまだ馴染みの薄いアウトサイダー・アートとは、一般的に美術の教育を受けていない人々の創作のことを指し、2010年にパリで開催された『アール・ブリュット ジャポネ展』をきっかけに今、世界的に注目を集めている。(中略)(櫛野は)障害者アートをはじめ、ヤンキー文化や老人芸術に関する作家など、表現せずにはいられない独自の感性を持った人間たちを追い続けている」とあったのに魅かれた(写真もSPICEのサイト https://spice.eplus.jp/articles/234676)……決して「アーチスト」ではなく、作っているものも「アート」ではない72人2000点もの作品が並ぶのは圧巻。毎日架空芸人とネタを書き留めている男、昆虫で鎧武者を作った爺さん、ひたすら奇怪な仮面を作った謎の人、毎日食事メモを描き続ける元調理師、あの過剰な成人式衣装を作る九州の洋服屋、使い込んだ雑巾をひたすらスケッチする掃除夫爺さん……どれも尋常ではなく密度が濃い。まさに「表現しなけりゃ生きられない」人たちの生きざまが惹きつける……大学まで行って「美術」を学び、創作しないがいつも「アート」を意識してきた自分の、「ちっこさ」に気づいた。櫛野は「『人はなぜ表現をするのか』ということを追い求めたくて、僕はこの活動を続けています。(中略)普通なら自暴自棄になってしまいそうな境遇を、彼らはエネルギーに変えて創作のきっかけにしていることが素晴らしい」という……自分は、ちまちました日常の、常識の中で生き続けていることを「擬態かも」と自嘲することもあるが、「表現しなけりゃ生きられない」場所に身を置くべき時期かもしれない。(5月19日まで開催)