h.Tsuchiya

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爺本27 秋におススメ 3つの『三文オペラ』

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三文オペラ

 読んだ順でいうと、開高健の『日本三文オペラ』(1959)、武田麟太郎『日本三文オペラ』(1932)そしてブレヒトの戯曲『三文オペラ』(1928)だが、世に出た順はこの逆……開高のは大坂城傍、旧陸軍砲兵工廠跡に埋められた兵器や資材の鉄くずスクラップに目を付けた泥棒「アパッチ族」が警察相手に、「食うために」跋扈する半実話……同じ事件を元に、小松左京は『日本アパッチ族』を、在日朝鮮人梁石日ヤン・ソギル)は『夜を賭けて』を書いており、3冊全部面白い!……武田のは、アドバルーン屋兼貸金屋兼浅草の貧民アパートを経営する男とその店子たちの底辺生活ぶりを描いていてこれも面白い……前者はアマゾン・プライムで、後者も青空文庫(無料)で読める……そして思った。「なぜ2人の作家が同題の本を書いたのか」と……元になっている『三文オペラ』って、そもそもなんぞや? で岩波文庫ブレヒトを読んだ次第。YouTubeでドイツ語の映画も観た。テーマ曲はジャズのスタンダードにもなった『マック・ザ・ナイフ』である。ホントはこれを芝居で観たかったが、今どきこんな「異化作用劇」をやる劇団なんて、武蔵関『ブレヒトの芝居小屋』くらいかな。でも移転中でやってない。中味はロンドン場末に巣食うやはり泥棒や貧民たちのドタバタ。でも1920年代の資本主義の矛盾噴出の世相も描く。山っ気あるブレヒトが200年前の芝居『乞食オペラ」を改作したもの……「三文」は「早起きは~」の箴言以外は三文判、二束三文、三文小説など安っぽい無価値なものを指して良い意味がない(今だと100円弱?)。冒頭の2冊含めて共通するのは「下流民」「下級国民」たちのしたたかな生活力……話が脱線する前に止めるが、ま、秋の夜長にたまには「活字本」を愉しんでくだされ。