h.Tsuchiya

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爺本29 無粋な台風が邪魔する『十三夜』

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十三夜

 「今宵は旧暦の十三夜、旧弊なれどお月見の真似事に団子をこしらへてお月様にお備へ申せし、(中略)十五夜にあげなんだから片月見に成つても悪るし、喰べさせたいと思ひながら思ふばかりで上る事が出来なんだに、今夜来てくれるとは夢の様な、ほんに心が届いたのであらう」……身分違いの家に嫁いだ娘(お関)が急に実家へ帰ってきた。夫と離縁したいと伝える気なのだが、驚き悦ぶ母親が話も聴かずにこんなことを話してくる……ご存じ樋口一葉の『十三夜』だ。結局、お関は両親を説得できずに嫌な婚家(こんか)に戻るのだが、青い月の下で悄然としていると車屋から「乗ってくれ」と声をかけられる。その車夫が実は……という切ない話は読んでもらうことにしよう。一葉独特の文体がイイから……それから120余年後の明日10月11日は、やはり「十三夜」である。片見月にならぬよう、お月さんを拝みたいが野暮で間抜けな台風19号に邪魔されそう。せめてYouTubeで、「青空文庫」や1953年のオムニバス映画『にごりえ』(一葉の3篇(十三夜、大つごもり、にごりえが原作)を愉しんでくだされ(消されたかも)