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爺本34 「月見草」野村の死と『富岳百景』

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 建国記念の日の今日、野村克也(84)の訃報が届いた。昨秋亡くなった金田正一は子供時代のヒーローだったが、野村は捕手というポジションで「考える野球」の面白さを教えてくれた。それにブツクサとぼやく人間味があった……セリーグで華やかな脚光を浴びる長嶋や王が「ひまわり」なら、パリーグの自分は「日本海の海辺に咲く月見草だ」というのもぼやき語録の有名な一つ……話は、その「月見草」のこと。偶然、昨夜『青空文庫』で太宰の『富岳百景』を読んだ。例の「富士には月見草が似合う」の一文が出てくる。ま、人生再起を図り、2番目の妻になる人との見合いも上手くいった時期だから、いつもの嫌らしさがない……だが、太宰は根っからの嘘つきだ。作中、恩師・井伏鱒二と山に登り、山頂で井伏が「放屁」したというのはまったくの嘘噺。そして「月見草」も怪しい。時間帯から考えて「マツ宵草」だったのではないか。どちらも明け方にしぼむし、明治頃の外来種で人気があった(竹久夢二の歌詞は「宵待ち草」)から、世間でも「月見草」と混同する人が多い。太宰は、壮麗な富士と真逆に対比したくてウソの「月見草」を添えたと思う……で、野球に話をもどすと、野村よりもっと地味な存在が巨人V9時代の捕手・森祗晶だろう。西武監督になってやはりV9をやったが、ガッチガチの「貯金野球」。面白くない野球の典型だった(本人は「勝つことが大事」)。ケチでじぶとい特徴を草花にたとえると何だろう?オオバコかな……