h.Tsuchiya

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「丁寧な暮らし」をする女性たち

 絵本作家で園芸家でもあるターシャ・テューダさん(1915-2008)という米国女性を回顧するドキュメントがYouTubeに流れていた(写真は彼女の著書『何があっても前を向いて』角川書店)。92歳の生涯を「夢に向かって自信を持って努力すれば成功できる」というヘンリー・ソロー(『森の生活』著者)の言葉を指針に生きられた幸福な人。家族や花、愛犬への愛情があふれる人柄に感じた。
 齢を重ねた人の顔は人種・性別の差がなく同じように見えるものだが、テューダの顔は107歳で亡くなった書家で抽象画家でもあった篠田桃紅さん(1913-2021)によく似ている。最晩年まで毎朝墨を摺ることから一日を始める暮らしを続けた。作品はシャープ、簡潔である。(作品と人の画像は岐阜現代美術館のサイトがおすすめ)
 またテューダの花作りの情熱と丁寧な暮らしぶりは、京都・大原でハーブ栽培をしていたベニシア・スミスさんの生き方に重なった。(写真はDVD本『猫のしっぽカエルの手』世界文化社)。TVシリーズで彼女の地に足がついた「スローライフ」に憧れた人は沢山いると思うが、心配なのは彼女が難病で視力を落とし、昨年夏、介護施設に入られたことだ(クリスマスには家族と自宅で過ごされたようだ)。
 今回、こんな記事を書いたのは、YouTubeに「丁寧な暮らし」を標榜する似たようなサイトが増え、中に「ン?……」と思うことが多くなったからだ。上に書いたような「達人」たちから感じるものとは違う。漫画に『丁寧な暮らしをする餓鬼』(塵芥居士、KADOKAWA)があって、その惹句に「コーヒー豆を半日かけてすり鉢ですったり、ビニール袋を三角形に畳んだり、茶殻を撒いて掃き掃除をしたりと、丁寧に生活を送っています」とあるのが笑えた……いやいや、他人様の生き方に口は出すまい。ワシも「丁寧に暮らしたい」のである(笑)