h.Tsuchiya

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好不好?某亀先生的日常和人生

 住宅街の角で通行禁止の看板を立てて立哨。すると何人かの通行人が右手の家の庭先をのぞき込んで行く。「いるかな~?」とか「タケちゃんおはよー」なんて声をかける人もいる。気になってよく見ると大きな水鉢の中から亀が首を出し、半眼で空を見ていた。頭部の両脇に赤い筋がある。この亀先生(かめさん)の名前は「タケちゃん」らしい。首出しポーズに飽きると、青黒く淀んだ水の中に潜る。その繰り返し。
 老婦人の車椅子を押した介護者らしきおばさんが、「タケちゃんはいいわね~。結構なご身分で」と言ったのに思わず笑った。う~ん、これが「結構な身分」かな? でも印象が変わったのは、昼時に見た光景だった。
 家の奥さんが庭の柵越しに手を伸ばした途端、亀先生は水鉢からバッと飛び出し、踏み台の石を脱兎ならぬ”脱亀”の勢いで滑るや約2mほど離れた水槽に飛び込んだ。そこに奥さんは水をはりながら小さなエビセンみたいな餌をバラバラっと。亀先生はパクパクと食べる。まるで専用の食堂だ。いやあ実にアクティブである。
 奥さんの説明によると、知人が夜店で買ったミドリガメが大きくなって飼えなくなったのを引き取った。もう20年は生きている。餌は一日おきにしてるけどいつも完食。気が向けば庭中を散歩もするという。食べ終わった先生は、踏み石の上で甲羅干し。
 調べると……通称ミドリガメは正しくはアカミミガメという外来種。平均15年程度の寿命というが、ここのは長命のようだ。そして意外と知能は高く、餌をくれる人などを見分けてなつくらしい。
 うむ、三食昼寝、散歩あり……。ライバルも家人もないからストレスもない。孤独ではあるが長生きはできている。他人(他亀)の気持ちは分からないが、先生は幸福かな?……「好(ハオ)」という返事が聴こえた気がした。