h.Tsuchiya

My NEWS

コトバの力

f:id:RIPEkun:20170109225727p:plain

 

 昨年末、文春から司馬遼太郎の新書が出た。といっても60年以上前に書いた軽い随筆。この人のお陰で永いこと飯が喰えた連中が、まだダシガラをしゃぶるのはみっともない。作家は時代や人間のよく見えぬ部分を抉り出すコトバの力を知っている。同時にその限界も。墓の下で彼は「もう賞味期限切れだ」と苦笑している気がする。でも司馬のコトバで今でもおもしろいのがある。「ほとんどの人は永く生きたつもりでいながら、じつは語るに足るほどの体験は数件ほどもない。短編小説として絞りとれば三編もできあがらない」(『風塵抄』)。まったくそう想う。