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爺本08 宮部みゆきの『おそろし』

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 人気作家宮部みゆきが得意なのは「江戸・怖い話」。『おそろし』(2008年)もそれで、NHKBSでは波留主演で14年にドラマ化された。脚本・演出の金子が要領良くつまんでホラー仕立てにした秀作だったが、原作の印象は違う。「怪しい物語」をしに来る客たちの話を聴くうち、語り手も主人公の聴き手も、ものごとの表裏は合わせ鏡であることに気づく。その転換、止揚、深掘りが絶妙。誰の心にも邪悪なものと聖なるものが共存する。それを認めて慈しもうとする「やさしい怪談、怪談の心療内科」(縄田一男の評)なのだ。だから人々は共感し癒される。作品にムラはあるが、その「人間通」ぶりは、大沢・京極らとの『大極宮』という著述環境で引き出された天稟かもしれない。まだ?58歳、還暦過ぎてから書くものが楽しみだな~。