h.Tsuchiya

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変な夢

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 作家の故阿部公房は、枕元に手帳を置いてみた夢をすぐ書き留めるようにしていたという。凡人のボクは、せっかく面白い夢を見て、「これはちゃんと覚えておこう」と夢うつつの中で決心までしているのに、目覚めたとたん、すっかり忘れている。夢見ることにも人間は結構エネルギーを使うもんだ。これだと、起きて半分、寝て半分の2つの人生を行き来しているようなものだ、などと見当違いの感慨にふけったりもする。

 でも、今朝方見た夢は、変すぎてよく覚えていた。それは、自分が指の背を使ってバチのように太鼓を打つ夢だった。それもなぜか小倉の祇園囃しみたいなリズム。そう、「無法松の一生」に出てくる「暴れうち」だった。余談だけど、三船敏郎が無法松をやった映画では、たぶん本当に本人がみごとに叩いていた。目をむいてがなるだけの、滑舌も悪い役者だと思っているけど、この演技というか、役者魂には驚いた。でも、この「あばれ打ち」はこの映画から逆に広まったとか。で、その太鼓打ちだが、最初は力も入らず、さっぱりリズムに乗れなかったのに、しばらくしたら調子があがり、「そら乱れ打ちだ。それ放れ駒だ」てな具合。

 できなかったことが、ふとした拍子にできることがあって、すごくうれしくなることって昔はたくさん経験した気がする。小学校の時の鉄棒の「逆上がり」がそうだった。美術で空を水でにじませてグラデーションにしたらすごくリアルに描けた。天ぷらのかき揚げがからっとまとめられた等々(なんとくだらない!)。それで一度できると、何でもできるような気分にもなれた。最近はそういう経験が、ない。

 夢の中で指をバチにして太鼓の「あばれウチ」ができたことは、おそらく何の役にも立たないし、自分の気分が壮大な自信に溢れたってわけでもない。でも、なんとなくウキウキとする変な夢だった。中途半端に現実を引きずったような夢を見て、損したような気分になるよりは、「ま、いいか」てなものである。