h.Tsuchiya

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「翁媼(オウオン)」余談

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 翁(おきな:男)と媼(おうな:女)を合わせて「翁媼(オウオン)」と読むことは、森鴎外の短編「じいさん、ばあさん」の朗読を聴いて知った。……語からは能の『高砂(たかさご)』(あの♪高砂や~♪)の画が浮かぶ。これを正月縁起の神棚飾り「下げ紙」の図柄にして作り、売ってきたのが、わが祖先・新潟佐渡市新穂・金子忠兵衛家。ウチでは「切り透かし」と呼んだが……忠兵衛は、代々、文弥人形作りや提灯など元禄から続いた手仕事職人の家系である。ワシの血にもそれがあるようだ。……貴重な下げ紙を保存してくれていたのは、同市両津のホテル「天の川荘」さんだった(上野池之端・うなぎ割烹『伊豆栄』の支店)。下げ紙の保存講習会もやっていたらしい。新穂では時計店「金生堂」が図版と道具一式を保存してくれている。

爺飯68 片手間の夕飯はこんなもの

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 メシの話題だというのに、小汚い画で恐縮。というのも、例年よりも所得税申告の作業が遅れていて、書類を広げながらの「片手間メシ」になったから。やはりほぼ連日出かける仕事をすると、帰ればぐったり、タマの空きもやるべき雑事に追われてしまうのだと痛感。……作ったのは、作り置きの「豚ゴボウ煮キムチ味」に白菜を加えて丼にしたものと、ブロッコリーの酢味噌和え、スケトウだらの甘煮(棒鱈煮)そして、缶ビール。野菜が少し足りないが仕方ない。……ちなみに朝は連日、トースト1枚に手製のリンゴジャムを塗ったもの、ヨーグルト少々。昼は、なるべくイートインのあるコンビニを見つけて、おにぎり2個にコロッケなど(500円以下)。……それだけに晩酌&夕飯はゆっくりと旨いものを作りたいが、なかなかゆとりがない。孤老暮らしの翁媼(おうおん)たちは、いったい何を食べてるのだろう。取材してみたいぞ「ジジババの『隣の晩ご飯』」!

爺歌48 歌の寿命は?『果てしなき情熱』

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 これは歌の題名ではなく、70年前1949(昭和24)年の映画の題である。破滅的性格のゲージツ作曲家が主人公なんだが、なんと彼の作る曲は服部良一のもの。といって服部がモデルではない。映画では『雨のブルース』『蘇州夜曲』『湖畔の宿』『夜のプラットフォーム』『ブギウギ娘』などが挿入される。当時人気最高の笠置シズ子が歌に芝居に大活躍するが、一人の作曲家の歌で構成した変な映画なのだ。監督は市川崑、脚本は妻の和田夏十。画は良いがドラマとしてはグダグダ。……当時、新婚、29歳の才女もプロデューサーに勝てなかったのか? 些事だが、劇中に出てくるJR大久保駅の看板が「おほくぼ」となっている。……さて、映画にはないが、服部良一が残した曲には、『青い山脈』『東京の屋根の下』『銀座カンカン娘』などがあり、いまだにどこかでジジババが唄っているし、『東京ブギウギ』をカバーする若手も多い。さすが国民栄誉賞受賞者(吉田正に継ぐ)。……でも、こんな歌を知っているジジババが死んだら、もう残らない気がする。「ゲージツの寿命は永遠だ」と思う人もいるかもしれないが、服部の曲でさえ70年で消えようとしている。100年超えて唄い継がれる曲なんて数億曲のうちの1つか2つ。……もの好きな方は、昭和歌謡レヴューグループ・虎姫一座の『東京ブギウギ』カバーをどうぞ。唄として好きなのはYouTuberの「ThokoSetzer」さんだけど……

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その26)

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(ちょっとマニアックな「カタコウ」の話)
 交通や雑踏などを扱う「2号警備」で頻出する用語に「カタコウ」がある。何だソレ?……運転する人なら「片側交互通行」と書けばわかるだろう。道路工事などで片方の車線を止め、空いている車線を交互に通すアレだ。待つ身になると苛立たしいが、流れを捌く方はけっこう大変。……じっと佇む「立哨」とは真逆の、機敏かつ的確に合図を出し続けなければならない。車の流量や信号間隔などを読み取るのも大事だが、これは2人以上でやるので呼吸の合った連携プレイが最重要になる。旗ないし誘導棒を使って対角線上の相手と、「止めて」「流して」の合図を交互に送るのが基本。……先日は2日続けてこれをやった。歩道も車道に迂回させるケースだったが、一日目はひどく疲れた。組んだのが、腰の曲がった爺さん2人。この2人の動作は緩慢だし、こちらの合図を見てないことも多い。誘導棒の振り方もまるで線香の火を消すようような仕草。ほとんど一人の判断でやるしかなかった。これは「管制」のミス。「そういう現場とは聞いてなかった」。2日目は、急きょ、慣れたベテランが派遣されて来て、こちらは円滑に終了。「3ヵ月目にしては上出来だ」と褒められたワシは、小学生みたいにすなおにうれしくなり、帰りに「牛鍋」大盛にしちゃった。……簡単なんだが、ミスって死んだ人もいる。侮れない。

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その25)

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(芯まで冷えた。雨中立哨8時間)
 2月末日。東京の今日の雨はしつこくて朝から夜まで止まない。代々木の初現場は個人宅の解体工事中。その前で産廃搬出車の警備に当たった。狭いT字路から出てくる車に神経が張った。……途中、施主の母娘が「あぁ、これで見納めね」と現場に記念写真を撮りに来るようなほほえましいこともあったが、いかんせん雨が冷たく、防寒着もレインコートも2重手袋もカイロ3個もほぼ役立たず。時間とともに躰が冷えた。……結局、早上がりもなく延べ8時間の立哨だった。靴底からも水が入ってきた。体力には自信はあったが、低体温症にならないようにという心配だけしていた。帰り路、「まぁ、これも初体験だワイ」と思える余裕があったのが救い。……昨日の新宿の現場は、咲きほころんだ白梅を雀どもが食い散らかしていたし、今日は近くの公園で関東で一番早い「河津桜」も見たというのに、 Spring is far away.、春はまだまだ遠いらしい。

やっぱり、どこか嫌いなR社

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 今日のニュースによると、どこがいいのか金融業界は採用充足だが建設などは足りていないという。日本は、なんでこんな企業文化が支配的なのか! 元凶の「リクルート」は、80年代一杯、出入りのデザイン会社としてメシを喰わしてもらった義理がある。だが、当時からどこか好きになれない会社だった。1988年にグループ企業の未公開株が賄賂として譲渡した容疑で逮捕された会長の江副は、かつて55年日韓闘争~60年安保という時代に、当時の全学連や、同東大生・樺さん死去にも背を向けて、大学生向け企業広告の営業を始めていた。卒業学科が容易い心理学科だったことも怪しかったし、そのノウハウをベースに大学生向けのSPI(Synthetic Personalty Inventory:総合適性検査)を開発したり、ES(エントリーシート)方式を広めたり、世界的にも珍奇で、見た目も醜悪なリクルートスーツを標準化したのも、すべてこの会社である。同業だった毎コミ、文ブレ、日経ディスコ、UPUなどは可愛いものだ。江副は裁判を切り抜け持株を手放したが、しっかり400億円の売却益を得たという。……もう故人(2013年没)だから、これ以上悪口は言わないが、「アスキーは人材流出企業、リクルートは人財輩出企業」などと起業志望の同社社員がうそぶいていたは笑止だった。……若者よ、企業よ、R社なんかなくても働きの出会いはあるぞ! 首輪をつけられた「飼い犬」はだめだ!

爺歌47 「踊(り)子」3世代

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 カラオケで「おどりこ」と入れると3通りの歌が表示される。まず三浦光一(1928年生)の『踊子』(♪さよならも言えず、泣いている♪)。これは川端康成の『伊豆の踊子』がベースになっている”文芸歌謡”だ。1957年(昭和32年)の曲だから、唄う人はもうジジババだけ。人気があって今でも唄われるのは、村下孝蔵(1953ー1999年)の1983年の曲『踊り子』(♪答えを出さずに、いつまでも暮らせない♪)、これは舞台ダンサーとの愛の破局がテーマ。でも歌詞が「写真をばらまいたように 心が乱れる」とか洒落ているし、『初恋』もヒットさせた彼を偲ぶ人がすごく多いのだろう。そして最後が、1999年にリリ―スされた下田逸郎(1948年生)の『踊り子』(♪恋の終わりは いつも同じ だけど今度だけ違うの なにかが♪)。恋=人生を「踊り」に見立てて女視点で別れを詠っている。良い曲だし、”吟遊詩人”下田は音楽界でもシンパが多いのに、リクエストして唄う人はごくわずか。……全部、好んで唄うのはワシぐらい(笑)
 送り仮名の違いはあるが、ともかく「おどりこ」という曲名は3つの世代に登場している。その時々の時代の波動で、フワッと浮かんだのだろう。だが、「踊り子」という日本語は死んで「ダンサー」だけになる気もする。あじけないけど……。