h.Tsuchiya

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イデオロギー・バランスの幻

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 「やじろべえ」という昔ながらのおもちゃがある。右に左に揺れながらしばらくすると動きが止まる。今、日本の阿部政権は「右翼的である」と中国や韓国のみならず欧米の一部からも批判されている。しかし国民の支持率はは6割近くで維持されているし、国内「左翼」勢力も有効な「阿部政権批判」を組織できずにいる。この様子のまま推移して安定するのだとすると、こんなことが考えられる。今までの「やじろべえ」はむしろ左に左にと傾く癖があったが、ここにきてやっと少し右寄りに動くことで、本来のバランス・ポイントに達したのではないか、と。

 そう考えて思い当たることがなくもない。戦後民主主義教育の影響を強く受けて育ち、何となく「右翼=保守的=戦争賛成勢力=悪」v.s.「左翼=進歩的=戦争反対勢力=善」という図式的思考(これをイデオロギーという)に馴らされてきた。1970年代いっぱいはこのイデオロギーが全盛だった。だが、年々イデオロギーなるものの阿呆くささ、薄っぺらさに世界全体が気づき出したと思う。ソ連崩壊し、バブルが破裂し、日本の保守勢力も四分五裂、日教組や労組の組織率は急速に低下……右も左もそれまでの磁力やポテンシャルを失ったのだと思う。

 昨今、日本の若者の間で「嫌韓、反中」ムードが広がっているという。「2ちゃんねる」などのニュースサイトはまさにその牙城と化している。たしかに韓国や中国の政権寄りの一部勢力は、目に余る反日キャンペーンをしている。悪口やねつ造話を世界中に広める動きすらある。感情として不愉快、理性として理不尽に思って当然だろう。「やじろうべえ」が右に振れたようにおもえるが、それはイデオロギーというカスガイがはずれただけのことなのかもしれない。

 ボクがこんなブログで、苦手な政治的発言をしてももたついてしまうから、時間のある人はYouTubeで二本の映画をみてもらいたい。ボクが指摘したいことが少しわかってもらえると思う。一つは日本映画で「天皇・皇后と日清戦争」(新東宝。1958年)。もう一つは中国映画で「1984甲午大海戦」(2012年)である。今から110年前の日清戦争における大海戦(黄海海戦または甲午海戦)を描いたものだ。上映された年度も半世紀も違うが、両方とも基本的に「トホホ映画」なのである。だが、これらをリアルタイムで見ていたかつての日本人、そして今の中国人は「これぞまさしく正しい歴史、正しい愛国だ」と思ったに違いない。

 人間は何度も生きることできないから、常に時代の制約を受ける。右や左の同時代人を見て育ち、難しく考えるのは苦手だから、なるべく簡単に図式化(イデオロギー化)して世界を知ろうとする。だから人間はいつも先輩の苦労した経験や蓄積した知恵を継承できないまま、バカに生まれ愚かなままに死んで行く。

 人々の頭の中の「やじろうべえ」が、右と左に揺れてもいつかその中間の「良識」でバランスが取れると思うのは、ひどく間違った妄想である。幻想である。……フゥ、やはり政治に近いことを書くのは疲れるよ(笑)