東大生山崎晃嗣が48年、中野・鍋屋横丁に設立した闇金融会社が「光クラブ」である。だが翌年には倒産し、山崎は自殺。その特異な性格から三島『青の時代』や高木彬光『白昼の死角』のモデルになった。山崎を「僕らの英雄」と語るのは、成瀬映画『怒りの街』(1950の)宇野重吉と原保美。彼らは ”スケコマシ”で稼ぐ不良大学生役だった。
光クラブ事件と同じ頃、長者番付1位で注目されていたのがやはり金融業者の森脇将光。こちらは50歳近い。だが、独自の情報収集能力を持ち、戦後昭和の政財界スキャンダルのたびに「森脇メモ」で世間を騒がせた。そのうち、九頭竜川ダム汚職を題材にしたのが石川達三の『金環食』。面白いのは映画化された時、森脇役を宇野重吉が演じたこと。民藝創設者で”正義”を掲げたがる人が、1950年という戦後の「ドサクサ」臭漂う役を2度も演じた。なお、49年に中共が誕生、50年に朝鮮戦争が始まっている。