h.Tsuchiya

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爺本32 6回も映画化される『野生の呼び声』

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野生の呼び声

 来年2月にハリソン・フォード主演で『野生の呼び声』(The Call of the Wild:原作ジャック・ロンドン)が映画化されるという。1903年に発表された動物小説なのにこれで6回目の映画化らしい(TV番組を除いて)。ちょっと珍しい……子供向け物語で読んだことがある人も多いだろうが、映画を観る前にちゃんとした大人向け完訳本を読んだ方が良いと思う。映画版は、YouTubeで何作かを観たが、全部がっかりした……がっかりする共通点は、そり犬のバックが主人公であるのに男優が中心になってしまっているからだ。とくに72年のチャールトン・ヘストンのは最悪だった。ヘストンってバカか? 今回のフォードのは予告を観るとディズニーのクソCGのように見える。あまり期待しない方が良さそうだな……原作の初邦訳は1911年の堺利彦。わが街・四谷左門町で立ち上げた日本初の編集プロダクション「売文社」の仕事だった。彼は題名をちゃんと『野生の~』と訳しているが、戦後続々と出された新訳の中には『荒野の呼び声』としたものも多い。こっちで知る人もいるかな(角川や岩波)。誤訳か?子供向け忖度か? Wildnessではなく形容詞Wildにtheがついているところがミソなのに……今、おすすめは深町眞理子訳(光文社古典新訳文庫)。バックが徐々に自分のうちなる「野生」に目覚め、後に狼たちのCallを聴く。アラスカの厳しい自然と人間たちの描き方もドライで的確で訳文も上手いなぁと思う。このオバサンいや先輩訳者も注目だ。解説文もいい。……アマゾンポイントでロンドンの別の短編集も買った。冬休みの愉しみだな。