h.Tsuchiya

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寒い風景と清々しい点景

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 寒々しい季節に禍々(まがまが)しい事件が多くて心が寒々する。だが、そんな心象風景を変えてくれるような清々(すがすが)しいシーンもないわけではない。12月に入ってこの20日間に見かけたのは……1.電車の中で外国人老女が本を読む姿がカッコ良かった。観光ガイドかと思ったが、ヒエログリフの図版が入った結構文字量の多い本。アガサの『ミス・マープル』をちょっと連想させたが、もっと一徹な学者風。日本人乗客の殆どが「スマホ・ゾンビ」になっているが、本を読む人の姿はなんか好き……2.「優先席」の前で老人たちが2人も立って、脇にベビー・カーを支えて立つ若い母親に席を譲ろうとしていた。母親は「すぐ降りますから」とすっかり恐縮。そこに周囲の老人まで加わって赤ん坊の話題で和やかになり、2駅先で皆な降りた。なんだかホッコリ……3.電車を降りて改札に向かう階段に人が殺到。この時の押し合いへし合いする浅ましさが大嫌いだ。その混雑の中で目の前にいた、いかにも「建設職人系」の大柄な男が一瞬止まって、女性に「どうぞ」と先へ促した。男のすぐ後ろについていた自分はぶつかりそうになったが、男の肩を叩いてあげたくなった……4.立ち食いソバ屋で、2ブロック金髪染めのこれまたいかにもDQN系のアンちゃんが、食べ終わって返却棚に戻す時、「ごちそうさまでした」と。片や自分は、「ゴッさん」と小声でモゴモゴ言っただけ。恥ずかしかった……なんてことはない光景。全体の風景に色を添えるだけの点景だが、果たして寒い心象風景全体まで変えられたかは疑問。20日間で「たった4つ」だもん。(「4つも」と言えば、「コップの中の水」論議だけど……)