コロナ禍に「丁寧な暮らし」という言葉が流行ったが、すなおに思い浮かべたのは英国人ながら京都大原に棲んでハーブの栽培に打ち込んでいた故ベニシア・スミスさんだった(没年は2023年6月)。で、彼女らのことをこのブログに書いた際、このマンガ『丁寧な暮らしをする餓鬼』もチラと紹介した。本は読んでいなかったが、ガサツで欲望まみれの「餓鬼」が丁寧に暮らすという設定がブラックで、すごいセンスだとずっと気になっていた。その気がかりを引きずってついに先日、全3巻を買ってしまったのだ。
餓鬼の暮らしはこんな具合……ビニール袋は三角にたたみ、タオルをたたむ際には手荒れ防止に朴葉オイルを塗り、牛乳パックは丁寧に開いて洗い、火鉢でほうじ茶沸かしながら編み物をする……てな具合。ドタバタも怪奇な仲間らとの絡みもあるのだが、基本は餓鬼らしからぬ自足したスローライフぶり。本物の坊さんによる仏教上の餓鬼の解説も随所にあって、餓鬼のタイプは36種もあるらしい。どうやら誰しも餓鬼の資質を持っているなぁと思えてくる。
この本の餓鬼はSNS世代であり、ツィッターも使えるしコーヒーを豆から挽いてドリップで飲んだりするから「多財餓鬼」(モノがいくらあってもまだ足りないと飢渇するタイプ)ではあるが、ガツガツしてないのが不思議。見た目は醜悪だがちょっと好きかも。
自分はすぐ本を買ってしまう餓鬼だ。あれほど紙の本は買わないと誓ったのにまた欲に負けた。でも執着はない。この本もそのうち棄てるけど、欲しい人いたら差し上げますよ。送料いりません(笑)