h.Tsuchiya

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琴ライブ付割烹を体験

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琴ライブ秀

 叔父の七回忌直会荏原町の割烹「秀」でやった。料理は並みの京風懐石だが、〆が江戸前鮨たっぷりというのがうれしい。だが、別の売り物がもう一つあった。1時間ほどプロによる琴の生演奏をしてくれるのだ。最初はBGMか思ったが、中庭を挟んだ離れで弾いているのを従弟らが発見。なかなか良かった。調べてみると、ガイジン客が増えているせいもあるらしく、「琴ライブ」を売り物にしている店がたくさん見つかった。これから秋が深まれば、中庭の紅葉を見ながら琴や笛の音を聴き、酒と料理を楽しめるかもしれない。それには、先立つものを蓄えねば……人間、何がモチベーションになるかわからんね。

爺飯30 「喰う」を語らぬ美学

 男が「喰う」ことを語るのはさもしい、と思い続けてきた。60過ぎて思い直し、語ってもいいかもと「爺飯」を書いている。形而の上と下を行きつ戻りつ、先達の語り口をノートしつつだ。『文人悪食』『もの食う話』もノートした。だが、「何を食べたか言ってごらん、どんな人か当ててみせよう」(ブリア=サヴァラン『美味礼讃』)と言うような不遜さは持てない。自炊独居老人初体験中なのだから、まだまだ勉強することの方が多いし、まだ気恥ずかしい。 

 

爺飯29 円谷幸吉の遺書

 

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 ほぼ半世紀前に自殺した五輪銅マラソン走者・円谷幸吉の遺書がせつない。「父上様、母上様、三日とろろ美味しゆうございました。干し柿、餅も美味しゆうございました。敏雄兄、姉上様、おすし美味しゆうございました。克美兄、姉上様、ブドウ酒とリンゴ美味しゆうございました。巌兄、姉上様、しそめし、南ばん漬け美味しゆうございました。喜久蔵兄、姉上様、ブドウ液、養命酒美味しゆうございました。……幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました。」(三日とろろは福島・須賀川の風習で正月3日に食べるとろろ飯)

爺飯28 カキ煮のっけ丼とゴボウ巻き

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 青森市場名物「のっけ丼」に倣って、ご飯の上に刻みレタスを敷き、カキとシイタケの時雨煮と玉子焼きをのっけて完成。仕事しながら缶ビー片手にチャチャッと食うにはこれが一番。濃い味にしたカキと少し甘めの玉子焼き、シャッキリレタスが旨かった。爺飯はついつい煮物ベースで茶色くなってしまうから、いつも彩りを気遣う。煮汁で作ったトリ胸肉のゴボウ巻きは、明日以降の保存食。

爺飯27 ビスケット

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 食育では「おやつは第4の食事」と重視するが、ジジババにはただの「口すさび」。漱石は英字ビスケットをよく食べた。できの悪い学生の答案を採点しながら「(荻生)徂徠は炒豆を齧って古人を罵るは天下の快事なりといったが、自分は、ビスケットをかじって学生を罵るは天下の不愉快なり」と愚痴った。その弟子・内田百閒も朝食はこれと牛乳。でも「IやLは画が少ないので歯ごたえがない、BやGはたいがい腹が潰れて一塊りになっているから口の中でもそもそする」とぼやく。一方、「ビスケットには固さと、軽さと、適度の薄さが、絶対に必要であって、また、噛むとカッチリ固いくせに脆く、細かな雲母状の粉が散って、胸や膝にこぼれるようでなくてはならない……」とビスケットの「あるべき姿(ゾルレン)」を600字余りも費やして熱く語るのは、鴎外の娘・森茉莉だった。ビスケットは奥が深いなぁ。

『2ペンスを鳩に』の記憶

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ウォルト・ディズニーの~』話つづき。完成した『メリー・ポピンズ』(1964年)を見ながらエマ演じるバトラーズが号泣する異質のシーンで使われる曲が『2ペンスを鳩に』だ。自分がこの曲を知ったのは翌年に出たブラザース・フォーのアルバム。グリーンフィールズや500マイル、七つの水仙、花はどこに行ったのなどの歌詞も全部これで覚えた。当時高校1年、クリフリチャードや洋画音楽やビートルズと並行して聴いていたことになる(文化放送「9500万人のポピュラーリクエスト」で?)…記憶としては別々の現象のようになっている。「記憶の曖昧さ」はイシグロ的かも、なんて気取ってられん「3歩で忘れる鳥(ハト)アタマ」のクチなんだから。

やっぱりエマ・トンプソンが好き

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カズオ・イシグロノーベル文学賞を受賞して良かった。彼の作品を曖昧で憂鬱という人もいるが、映画化されるとその良さを理解する人が増えるように思う(日本のM氏とは真逆)。『日の名残り』もその一つ。この映画はアンソニー・ホプキンスエマ・トンプソンという役者の力も大きい。個人的にはエマが好き。『ハリーポッター』などでもおなじみだが、一番は『ウォルト・ディズニーの約束』(Saving Mr Banks (2013)。『メリー・ポピンズ』の作者パメラ・トラバースを演じた。ディズニー役のトム・ハンクスも引立て役だ。この時54歳の彼女は、頑固だが賢く、繊細で内面の美しさで惹き付ける女性の魅力が溢れている。