h.Tsuchiya

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「この世には懲りたけど……」の説得力

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 プライムビデオで『オリーヴ・キタリッジ』が観られる。まじめで優しい薬剤師の夫につい辛辣に当たってしまう偏屈な女教師役を演じたのは、『ミシシッピー・バーニング』『ファーゴ』『スリー・ビルボード』などで知られるフランシス・マクダーモン(61歳、実生活ではコーエン(兄)夫人)。美人ではないが、こういう味のある顔の女は好きだな。そして夫の死後に知り合う男ジョンを演じたのはビル・マーレィ(68歳)。『ゴーストバスターズ』や、東京舞台の『ロスト・イン・トランスレーション』などで知られるが、ここでの役はチョビっとで、演技も抑えたものだが、複雑な半生を伺わせる怪演ぶり。
 ドラマを凝縮しているのは、オリーブがジョンにもたれながらこう言う場面。「この世には懲りたけど……まだ死にたくない」と。内心の深いところに焦りや怒りを抱え込んで生きてきた半生を、孤独になってから苦く振り返る。ワシら老人たちにはひどく共感できる言葉なんだよ。ピューリッツア賞受賞の原作(エリザベス・ストラウト)も読んでみたくなった。