h.Tsuchiya

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ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その5)

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 11月から続いているフランスのデモのせいで「イエローベスト」(安全ベスト/夜光チョッキ)が注目されている。町では駐車違反を取り締まる謎の2人組オヤジも着ているし、街路掃除の人も工事現場やイベントで交通誘導する警備員も着ている。「警備員」と書いたが日本の法律では4種ある。①施設・機械警備、②交通警備、➂貴重品輸送警備、④要人警備(ガードマン)。このうち一番求人に熱心な業界が②交通警備で、高齢者でもほぼ即採用になる。求人が増えている理由は二つ。都内では、有資格者を必要とする配置基準道路が昨年から2倍に増えたこと、もう一つは鉄道会社がホーム事故防止に保安要員を増強しているからだ。「立ちんぼ」「棒振り」と蔑視されがちで、ベテランは「謝るのが仕事さ」と言う。自分も始めているが足腰にキツイ。でも、身体は馴れるし、尊敬できるプロにも会った。目下の目標は来年の2級検定合格だ。

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その4)

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 男が65歳を過ぎて「就老」すると、途端に需要が限定される。昔取った杵柄も通じず、”盛って”書いた経歴書も相手にされず、取りつくシマもない断りが来る。世間から「不要」と言われた気になり、廃残気分でひどく落ち込む。そんな経験を誰もがするが、まるで人間の「消し炭」だ。……火鉢やへっついの燃え残った炭や薪は「消し壷」行きになる。着火はするがカンカン燃える「熾火」にはなれない。だが、この時期を乗り越えると、自分は「消し炭」でなく「埋火(うずみび)」なんだと思うようになる。消されずに、火種を残したまま灰をかぶっているだけというのが「埋火」。(新しい炭を足されれば)「まだまだイケる!脇役に徹して、心機一転やり直すか」と「就労」を再開する。「消し炭」より「埋火」にはどこか色気がある。……この季語を入れた冬の俳句を2つ。手あぶりの傍で亡き人を偲ぶ芭蕉の句「埋火も消ゆや涙の烹(煮)ゆる音」。人生の残る火種を惜しむかの子規の句「埋火の夢やはかなき事ばかり」

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その3)

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 日曜日は「試験」の日である。中高生の模試、民間のナンチャラ検定、各種国家資格など色んな試験が全国各地で行われる。そうなると本部、監督、点検、誘導などの要員が大量に集められる。年齢制限に厳しくないからジジババたちも応募するが、なかなかクセモノも多い。準備室でマニュアルの事前読み合わせをすることがある。これは要員の中から、クリアに受験心得などを説明できるチーフを選ぶのに必要なのだが、「熟読してきたのに、今さら何をするのか」と怒り出す爺がいた。シルバー人材センターが集めた「元教員」グループの一人だった。あるいは監督補助に回された別の爺は、「ボクは大きな試験でも監督しかやったことがないのに、今回初めて補助だよ、ハハハ」とムダなことを言う。元会社の役員だったらしいが、影で、「一言多士」とあだ名された。かと思えば、監督に指名されたオバサンは、同チームのオバサンたちと組んで「監督は責任大きいから辞退しま~す。多数決でこちらの男性にお願いしました」と暴走。役を振られた爺は「いや、そんな」と言いながらうれしそう……。「試験監督」バイトは、一見体裁良さげで、楽そうで、受験者に「マウンティング」気分になる奴も出る職務。だが、人間の本性が見え隠れするジジババ見本市でもある。

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その2)

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 河野外務大臣は2年前、文科省の役人に「(MSの)Excelワープロ代わりに使うな」と指示したことがある。本来の機能を無視してどんな書類でもExcelで作るのを「神Excel」と話題にもなった。職場の「OA化」(死語)で、何とかPCを使うようになったものの、憶えたのはこのソフトだけという人が、役人などに多い。シニア専門をうたって創業したある人材派遣会社も社員はこういうOB。「履歴書」や「経歴・希望職務」などの提出も、ふだんはFAXらしく、「メールで送りたい」と言ったところしばらくして送られてきたのが「Excel」で作ったフォーマット。HPに例示されていた募集案件に希望を出してからここまでほぼひと月前、反応が遅い遅い。セルの書式設定がされてないから記入が一苦労。そして、こうのたまう。「送られた書類は、文字がセルから切れたり、はみだしている。”印刷した原本”を郵送してくれ」との電話が来た。しかも「ご希望の仕事は埋まりました」との回答。なんのこっちゃ!それを早う言わんかい!である。悪いけど、この「Excel爺さん会社」とは、もう連絡しないことにした。ちなみに「Word爺」や「PPT爺」もいる。(つづく)

 

 

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その1)

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 子育てや住宅ローン返済が終わったらすぐにやってくるのが、「地獄のフタ親連チャン、十年介護」であることを、50代未満の人たちは知らない。自分の早期退職金や親の貯金が数千万円あっても、介護の経費、離職中収入ゼロの生活資金、復帰できるまでのつなぎ金でアレヨアレヨと消えてしまうことも想像がつかないだろう。……先日、都内デパート地下の物流センターで、一緒にバイトした60歳の男性(未婚)と、休憩中にそんな話で盛り上がった。父(大学教授)の遺族年金とわずかな貯えで母の介護を10年やったが、残ったのは築50年の分譲マンションの一室だけ。自分の国民年金がもらえる65歳までは、月に3万円ほどしか自由になる金はなく、スーパーの特売クーポンを狙う暮らしだという。「なりふりかまわず働くしかないんです」と生真面目に言う。(そんなに力むなよ)と言おうとしたが、止めた。(続く)

 

爺飯60 「水炊き玄海」はランチがおすすめ

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 新宿には、車屋や鳥源など白濁した鶏スープの博多水炊きが食べられる店が数店あるが、やはり真打は創業90年の「水炊き玄海」。昔の食通本で知っていた。お得なのが、高島屋店のランチメニュー。4代目矢野社長が苦心して商品設計した。ゴロゴロの鶏肉と鳥団子入りスープにオプションで野菜類を足せる。親子丼や雑炊、釜飯などが選べて3200円。ま、サラメシとしては高いけど、バブルの頃、靖国通り沿いにある本店の座敷で食べた時は1万円を超したと思う。……それがなんと、今日は、郷里の友人の娘・Mちゃんにゴチになった。「おごられ爺飯」でも美味しかった。
 これから鍋物が恋しくなる季節。でも一人で材料を揃えるのは大変だし、つい作り過ぎて持て余す。そんな時は、「穴場、穴時?」を見つけてプロの味を愉しむに限る。さて、次はおでん?モツ鍋?三平汁?うどんすき……佐渡味噌で作った「カキの土手鍋」や、大雪で2日も立往生した秋田で食べた「きりたんぽ鍋」も旨かったなぁ。鍋はどうも郷愁に繋がる食べ物のようだ。

爺飯59 「リンゴは何にも言わないけれど♪」

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 「近所の空き店に八百屋ができたよ」「そりゃ、キューリ(急)だね」……。看板も出さずダンボールをポコポコ並べたバッタ屋風。値段は相場の半値以下。つられて買ったのがリンゴ、「シナノゴールド」6個でなんと200円! 安いと逆に不信になるが、どうみてもまともで気持ち小ぶりなのと表面がべとつくくらい。べとつくのは熟しのしるし。人工ワックスではなく脂肪酸が増えて、表皮の天然ロウ物質を溶かしたもの。無害。……これだけ買ったので恒例「CCレモンで甘煮(コンポート)」を作る。あとはヨーグルトやサラダに混ぜたりすっぞ。……リンゴ栽培の歴史は1875年青森から始まるが、戦争で荒廃。大戦後1946年に「青森りんご復興」の声があがり、時同じく、並木路子の『リンゴの唄』が大ヒットした。人々が受け入れた背景には1940年(昭和15年)の童謡『りんごのひとりごと』の可愛らしいイメージがあったと思う。「私は真赤な りんごです♪ お国は寒い 北の国♪」