h.Tsuchiya

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「かもめ食堂」なぜ今も人気

 今日、電車の中で「かもめ食堂」のコットン地トートバッグを肩にかけた人を見た。小太りのかもめをあしらったデザインで、ボクはすぐにそれとわかったし、30代後半か40代の地味目のその女性を「あ、いかにも……っぽい」と思った。「っぽい」という独断的分類を述べると、映画版の『かもめ食堂』のファンである。決して”若すぎない”年頃で、北欧モノとくにマリメッコイッタラの食器などが好き。一人旅行も食べ歩きも好き。昔の『やっぱり猫が好き』もよく観ていた人、てな属性が見えるのだ。ボクも好きな映画だけど。
 『かもめ食堂』は、フィンランドヘルシンキにて日本女性(小林聡美)が経営する和食とコーヒーを出す店が舞台。そこに片桐はいりもたいまさこという芸達者に加えて、フィンランド人の脇役3人も絡む。とくにどうというドラマはないし人物の突っ込んだ説明もないが話はシュールに進む。ユーモラスな女性ものの達者な書き手・群ようこの原作本が具象画だとすると荻上直子監督の映画は抽象画。しいて盛り上がるのは「日本の普通の家庭の味」にこだわっておにぎりを出すくだりぐらい。そのツッコミ過ぎず説明しすぎないゆったり・ふわふわ感が「猫が好き」に通じると思う(室井滋は出ないけど)。荻上は小林・もたいコンビで『めがね』も監督した。
 映画はもちろんフィクションなんだが、モデルの店がフィンランドへ旅する日本人が押し掛ける聖地になってしまい、2015年に「Ravintola KAMOME」として居酒屋風に生まれ変わった。もちろん小太りかもめのデザインもひきついで。カップなどの通販グッズも売れていて、冒頭のトートは通販限定で3100円らしい。先日、小田急デパートのムーミンキャラ中心の北欧雑貨展も賑わっていた。ネットではイッタラのヴィンテージ食器の販売サイトがたくさんある。この映画と北欧の不思議な魅力については全然分析できていないけど、「小太りかもめ」ひとつ欲しいな……