h.Tsuchiya

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サービス業なら「巧言」者たれ?

 「巧言令色、仁すくなし」という言葉があり、「上手いおべんちゃらを言う人や容色を立派に見せる人は、『仁(他人への思いやり)』が足りない」の意味になる。キャバレーで鼻毛を読まれない用心としては大事だね。だが、「巧言」を「言葉使いが巧みである」という意味にとればどうだろう? 相手の気持ちと状況に合わせてタイムリーな言葉がかけられることはすばらしいじゃないか? 自分などは北国人らしく瞬発的な「返し」が下手くそで、モゴモゴ濁すか的外れな駄弁を重ねることが多い。人間相手の接客・サービス業なら「巧言」は必須の才能かもしれない。
 警備業も産業分類上はサービス業であり人間相手の商売だ。先日はこの「巧言」を考える現場だった。図に描いたように歩道上に工事車両を止め、車道に仮設の歩道を設けて歩行者や自転車を通す仕組みを作る。警備員3名で、あなたが警備③だとしよう。
 左右両方向から来る歩行者に対していったいどんな風に声を掛けたらいいのだろう?「どうぞこちらへ」と手差しするだけや、「足元ご注意(Watch your step!)」だけもありだが、こちらの都合で車道を歩かせているのに、あまりに味気ないし上から目線だ。お手本には「ご迷惑おかけします。お足元にご注意ください」などとあるが、歩行速度から考えて2秒以内でないと人は行き過ぎてしまう。簡潔に安全への思いを伝えねば……
 警備③のポジションは微妙な位置にある。仮設歩道の右3分の1あたりに片寄っている。右へ行く人と左へ行く人とで、かける言葉の内容AとBを変えたい。警備①や②も普通に声掛けしているからそれらと被らせたくない(うるさいだけ)……ここがサービス業として、「巧言」者としての工夫のしどころだ。
 自分の答え。長いこと仮設を歩いた人向けのAには「ご協力ありがとうございます」(協働作業風になる)。またこれから歩き出す人向けのBには「ご不便おかけします。すみません」(共感)とした。これをベースに「おはようございます(朝9時まで)」とか、「夕方までに終わります」などのバリーエーションを用意し、ベビーカーや高齢者のふらつく自転車を手助けもして、なんとかこちらの「思い(=仁)」を伝えようとした……てなてな調子で工夫してみると、仕事も愉しくなるから不思議。やりすぎぬよう、「合法的≧合理的≧合意的」に。あ、「巧言~」の反義語は「剛毅朴訥、仁に近し」だってさ。