h.Tsuchiya

My NEWS

梅の名句とイキな俳人

 季節が終わる前に梅の話を書いておきたい。
 数年前まで、この時期になると小田急線「梅が丘」の羽根木公園「梅まつり」(世田谷区HPより)と近所にある「美登利」の寿司を愉しんだ(鯖寿司おすすめ)のだが、自分の病気やコロナで足が遠のき、気づいたら昨日でまつりも終わっていた。残念! でも、街中ではまだちらほらと梅を見かける。
 とくに生け花をやっていない人でも、美しいのを見かけると「一枝欲しいな」と思うだろう……で、ある情景の噺……失敬しようと枝に手を伸ばしたら、運悪く梅園の主人に見つかり「折らないで」とたしなめられる。「ごめんなさい」と恐縮するこちらの様子を見て、主人は「ま、そんなに欲しいなら差し上げましょう」と自ら一枝折ってくれた。バツが悪かったけど主人のイキな心づかいがうれしいできごと……といった趣旨の俳句がある、江戸中期・炭 太祇(たんたいぎ)の句だ。
 な折りそと 折りてくれけり 園の梅
(「な折りそ」は、穏やかな禁止「折らないで」の意)
 この句のことは高浜虚子の随筆で知った(『俳句はかく解しかく味う』青空文庫)のだが、太祇という人に魅かれる。太祇には他にも「傾城の朝風呂匂ふ菖蒲かな」なんて艶っぽいのもあるが、そのはずで京都・島原遊郭に棲みついて俳句文芸の師匠や島原活性化の「プロデュース」もした人。さらに晩年の親友で彼の句集を編んだのが蕪村なんだから(絵の左上が太祇。右下が蕪村)イキや人情が分かっている俳人なのだ。
 この句とイキな俳人のことを知ったので、明日から街で梅を見つけるのがより楽しみになってきたよ(笑)