h.Tsuchiya

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チャットボットに「推敲」は無理?

 気づけばもう4月に突入。2週間以上投稿しなかったのは体調不良と気だるさのせい。風邪のような症状がダラダラ続き、仕事も休んでゴロゴロしてた。ヒマつぶしは例によってYouTubetiktokで、期待もせずに流していたら一つだけ中国の木彫ネタに目が留まった。
 横割りした丸太に切れ目を入れて扉に見立て、それに手を触れる僧侶が小さくあしらわれている。明らかに故事「推敲」のモチーフだ。ざっくりした彫り方が良い。
 「推敲」の故事。唐の詩人・賈島(かとう)がロバに乗りながら詩を作っていた。詩は、月夜に荒園に建つ屋敷を訪う僧が主題で、僧が門を「推(おす)」とすべきか「敲(たたく)」とすべきかと迷い、「僧敲月下門」が好かろうと思ったところで、ロバは偉い人の行列に突っ込んでしまった。賈島はその偉い人に、詩作に没頭していた経緯を話した。偉い人こと韓愈は、高名な政治家にして詩人で、「それは『敲く』が良いね。不意に訪ねた感じが出る」とアドバイスした。以降二人は友人になった……というもの。
 物書きの端くれとして、こんな高尚なものではないが脱稿前に「推敲」する苦しさと愉しさの合わさる経験をしてきたからこの故事には親近感が湧く。そこで昨今話題を集めているAIのチャットボット(ChatGPTなど)だが、こいつに「推敲」はできるだろうか? 文章だけを相手に編集や校閲するのは得意でも、人間の五感や経験から生まれるモノの感じ方や考え方、独創性は望めない。ま、「これぞシンギュラリティだ」と騒ぎたい人や過剰に警戒する人には、「少し落ち着けば」と言いたい(笑)