h.Tsuchiya

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「向田邦子の水羊羹」がなんでィ!

 寝落ち用にネットの「朗読」を聴く。先日は向田邦子の短編集『眠る盃』(1979)を前編・岸田今日子、後編・山岡久乃でやっていた。作家も朗読の二人も大好きだから愉しくて「寝落ち」できなかった(笑)。その一編に「水羊羹」があって「私は味醂干し評論家または水羊羹評論家」と口上し、「まず水羊羹の命は切口と角であります」に続くのが彼女の「水羊羹論」。桜の葉っぱの奥ゆかしさ、宵越しさせてはいけない、固すぎも黒過ぎも良くない=薄墨色、ふたつ食べるものではない、お茶の器は白磁のそば猪口と根来の茶托。さらに照明、空調、BGMまでこだわる。気に入っている店は南青山の「菊屋」だという。そして「水羊羹は1年中あれば良いというものではない。新茶の出る頃からうちわをしまうまでの短い命」と〆る。……「こだわりバカ系」随筆の走りにしてお手本である。面白かったからそのまま紹介しようと思ったが、ネットの中には「向田邦子の水羊羹」「菊屋」ネタがウジャウジャあった。中には「これは本来、冬のお菓子」と主張する福井県「でっち羊羹」話も多い……気分は「なんでィ!」と折れてスネた(わかる?笑)
 思えば猛暑のこの夏、自分も例年になく水羊羹をいただいた。でも菊屋のは350円(左上)、中村屋は356円と値が張るのでセブン(226円、左下)で我慢している。器はどーでもいいが、向田が指摘しなかったお茶は三重(伊勢)が本場の「かぶせ茶」が良いと思う。カテキンを抑えて苦くない。このペットボトル入りは関東にはなくて、近いのがキリンの『生茶』だ。BGMも向田は気だるい女性のJAZZボーカルを推すが、自分は今バイオリンの「ひまり」ちゃんが「推しの子」なのだ。
 とまぁ、対抗したつもりで、9月最後の水羊羹を今夜もいただいた。扇風機もしまった。