h.Tsuchiya

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朝ぼらけの「味わい方」

 毎朝6時半に家から10分の「曙橋」へ行き、そこから電車に30分ほど乗って勤務地某所に着く。今朝は東の雲間から太陽が出てきた。この時間帯を「朝ぼらけ(朝朗け)」という。漢字1字なら「𪰪」。これより少し早く周囲が明るんで来たタイミングは「あけぼの」(「ようよう白くなりゆく山ぎわは、少し明かりて~」(枕草子「春はあけぼの」)。
 西の空には、まだ沈まないままの月=有明の月がかかる。満月から4日経ってすでに右側から欠けてきている下弦の月で、弦側は日ごとに細くなっていく。なお、丸みの残る左側は「弧」。宵っ張りの月で、夜の9時過ぎでないと天空に登場せず朝まで西空にかかっている。
 この「朝ぼらけ」と「有明の月」の両方が出てくる冬の和歌があった「あさぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に ふれる白雪」(古今和歌集小倉百人一首坂上是則蝦夷征伐、清水寺建立者、蹴鞠名人〉」
 寒く気ぜわしいだけの単なる冬の通勤だが気分をあらためた。この季節の、この風景は千年前から変わらずにあったわけで、立ち止まって、見渡して、初めてそのことに気づく。ここはやはり古語めいた言葉が似合うね。
 日本文化、情緒というのは英語のsabtle(サトル。微妙、繊細、ほのかな、つかみどころのない)だと思っている(他の本でも書いたけど)。
 実は今、『ことだま(言霊)百貨店』なる珍妙なタイトルの本を準備している。レトロな百貨店の各階(各章)ごとにジャンルの違う日本文化と日本語を語るもの。日本の若い人、海外の人にも、一段深く(=面白く)伝えられる分厚なものを構想している。マンガや図版一杯で、色んな研究者、クリエイターの力を借りないとできない。いつれ詳しく書くから知恵を貸してね(笑)。