h.Tsuchiya

My NEWS

爺本28 心の「荒(すさ)み」と『あらくれ』

f:id:RIPEkun:20190918183516p:plain

映画あらくれ

 台風15号で被災した千葉の人の話を聞くと、「屋根修理・リフォーム引き受けます」などの怪しい電話や空き巣狙い、警察の交通信号用発電機を盗む事件、隣家との責任なすり合い、ブルーシート配布でもめる……等々が毎日起きており、天災の被害もさることながら人間の心の「荒(すさ)み」がストレスになっているという。あの3.11の地震でも、数々の日本人らしい「慎ましさ」美談の陰で似たようなことがたくさんあった……弱っている人の心や緊急時の措置に「つけこむ」ゲスな奴らには本当に腹が立つ。一方で「あおり殴打」男だの「あおりエアガン」男なども出てくるが、前者と後者は同じ「無法者」「人間のクズ」だが、少し違う気もする。ホントのところはわからない(あおりが保険金・示談金詐欺の当りやかも)が、かつてなら後者は「あらくれもん」と呼ばれただろう……「あらくれもん」は自分自身の心のなかに「荒み」を抱え込んでいる。それが激情となって噴出する。別に擁護はしないが、擁護したくなる場合もある。とくに女の場合だ……女の「あらくれもん」を見事に描いているのが、徳田秋声の『あらくれ』(1915年)だった。男まさりの主人公「おしま」が思うままに生きようとしては周囲と衝突し、怒りをぶつけて事態を悪化させる。これを繰り返す半生のリアルさが胸に迫る……実は、この本よりおすすめなのが、成瀬巳喜男が監督し、「おしま」をあの高峰秀子が主演した映画だ(1961年)。「熱い女は生きにくい」世相は今でも変わっていない気がする。この映画、たぶん今も外人主がYouTubeにアップしているのが観られると思う。

ほぼリアル「就老(就活老人)日記」(その38)

f:id:RIPEkun:20190916192346p:plain

勤老者たち

(「勤老者」たちの健康志向ぶり)
 今日9月15日は敬老の日総務省統計では日本の高齢者(65歳以上)人口は3588万人、高齢化比率は世界最高の28.4%。NHKはこれに追加して「働く高齢者の数は862万人、全体の12.9%」「高齢者の就業率は24.3%」と報じた……つまり高齢者の4人に1人が今も働いていることになる。当然だが、この比率は今後さらに高まるはず……「人生100歳時代」に入っているから、あと30年は「稼いで喰わねばならない」現実があるからだ。だが、仕事探しが大変だ……建設現場で見るとゼネコンは「65歳以上の高所作業、70歳以上の入場禁止」だという。わが警備業界でも大手は「65歳定年」という……しかし時代遅れな話だ。労働力不足が起きているのだから、企業は年齢バリアーを緩和するしかないし、一方高齢者もバリアーを克服する知恵とノウハウを持つしかないだろう……海外のマクドナルドでは88歳、92歳で働いているスタッフがいるという。化粧品のポーラにも90歳前後のセールレディたちがおり、丹波の和装小物縫製工場を支えているのは80代の女性4人だという……ワシは、こういう事例がニュースになること自体がおかしいと思うのだが、彼や彼女たちのように働くには一つだけ、「健康である」という条件がつく。建設現場で見ていても、爺さんたちはビタミン入りのドリンクやフルーツジュースを好むし、かつてのように「大盛・肉系・揚げ物中心」の弁当は好まれない。若手が多いトビ職たちですらそうだ(仕出し弁当屋の意識がおいついていない)。明らかに健康志向なのである。「元気に働き続ける自衛策」でもある……来週23日は「勤労感謝の日」だが、「勤老者」たちが自分の健康に感謝する日となるのかもしれない。

歴史の常識にも賞味期限?

f:id:RIPEkun:20190915132737p:plain

 今の子どもが習う日本史の教科書では、大化の改新が645年から646年になり、鎌倉幕府成立が1192年から1185年に、最古のお金は「和同開珎」でなく「富本銭(ふほんせん)」になったとか、聖徳太子厩戸皇子と表示するしないと論議されたりして、「フへー」となった……先日ネットの「現代ビジネス」(9月3日)で、本郷和人という学者が歴史的人物の名前の「読み方」も色々に変化しているという話を書いていた……例:父・後醍醐帝の息子で鎌倉幕府を倒した大塔宮護良親王は「だいとうのみやもりなが」ではなく「おおとうのみやもりよし」と読むのが今の学説……以下同様に、応仁の乱の主要人物である畠山義就は「はたけやまよしひろ」、信長の次男だがダメ武将で秀吉に降った織田信雄は「おだ(おた)のぶお」、出羽山形の猛将・最上義光は「もがみよしあき」、大坂の陣に出たまま行方知れずになった武将・明石掃部守全登は「あかしてるずみ」、忠臣蔵大石内蔵助良雄は「おおいしながかつ」……余談。人名ではないが、頼朝が平家を追い返した「富士川の戦」は「ふじかわのたたかい」、「松阪牛」も「まっさかうし」と濁音にならない等々。これは学説というより現地の読み方が主流になった例だな……常識、教養、ウンチクなんてものは、普遍でも不変でもなく、時代と共に、墓の下に埋もれていくもんなんだなぁと実感。戦前の人の中には「神武」以来の120人以上の天皇の名前を暗誦する人もいたが、今や絶滅種……ワシらの頭の中身も賞味期限がもうすぐ切れる。ま、それでいいんだけどね。どうせ、クソみたいなものしか入っていないから(笑)

爺本27 秋におススメ 3つの『三文オペラ』

f:id:RIPEkun:20190914195859p:plain

三文オペラ

 読んだ順でいうと、開高健の『日本三文オペラ』(1959)、武田麟太郎『日本三文オペラ』(1932)そしてブレヒトの戯曲『三文オペラ』(1928)だが、世に出た順はこの逆……開高のは大坂城傍、旧陸軍砲兵工廠跡に埋められた兵器や資材の鉄くずスクラップに目を付けた泥棒「アパッチ族」が警察相手に、「食うために」跋扈する半実話……同じ事件を元に、小松左京は『日本アパッチ族』を、在日朝鮮人梁石日ヤン・ソギル)は『夜を賭けて』を書いており、3冊全部面白い!……武田のは、アドバルーン屋兼貸金屋兼浅草の貧民アパートを経営する男とその店子たちの底辺生活ぶりを描いていてこれも面白い……前者はアマゾン・プライムで、後者も青空文庫(無料)で読める……そして思った。「なぜ2人の作家が同題の本を書いたのか」と……元になっている『三文オペラ』って、そもそもなんぞや? で岩波文庫ブレヒトを読んだ次第。YouTubeでドイツ語の映画も観た。テーマ曲はジャズのスタンダードにもなった『マック・ザ・ナイフ』である。ホントはこれを芝居で観たかったが、今どきこんな「異化作用劇」をやる劇団なんて、武蔵関『ブレヒトの芝居小屋』くらいかな。でも移転中でやってない。中味はロンドン場末に巣食うやはり泥棒や貧民たちのドタバタ。でも1920年代の資本主義の矛盾噴出の世相も描く。山っ気あるブレヒトが200年前の芝居『乞食オペラ」を改作したもの……「三文」は「早起きは~」の箴言以外は三文判、二束三文、三文小説など安っぽい無価値なものを指して良い意味がない(今だと100円弱?)。冒頭の2冊含めて共通するのは「下流民」「下級国民」たちのしたたかな生活力……話が脱線する前に止めるが、ま、秋の夜長にたまには「活字本」を愉しんでくだされ。

爺歌71 今宵上弦の月。で「旅の宿」

f:id:RIPEkun:20190906195446p:plain

上弦の月

 今夜6日、南の空に上弦の月(弦月、弓張月)がかかり、その真下に木星がすごく明るく見える……右半分の半月を「上弦」と呼ぶ理由を知らない70過ぎの爺さんがいて驚いたことがある……でも拓郎の『「♪浴衣の君は、すすきのかんざし~」と始まって「上弦の月だったっけ、久しぶりだね♪」に続く歌(『旅の宿』1972)は知っていた。作詞はご存知!岡本おさみ(きみの朝、地下鉄にのって、襟裳岬、落陽ほか)……恋人と秋の旅館。風呂上りに差し向かいで熱燗……くはッ、イイナァ。ウーン。それもちょっとワケありで、なんて妄想も浮かぶ名曲だが、創作裏話はバレバレのようだ。岡本(1942年生、2015年没)が70年9月頃に夫人との新婚旅行で青森県蔦温泉に行き、部屋に備えつけられていた火鉢の鉄鍋で熱燗を愉しんだ。部屋も別館2階の66号室とまで明かされている。今でも年に十数組は「旅の宿の部屋を」とリクエストしてくるそうだ……ま、秋深まる十和田~奥入瀬方面に、ワケがあってもなくても「浴衣の似合う」相手と出かけたいなぁ……ハァ~ッ。ムリか。歌聴き直してさっさと寝よっ!あ、エレカシ・ミヤジの『今宵の月のように』も聴くぞ。

「つつましい」と「つましい」は違う

f:id:RIPEkun:20190829195722p:plain

つつましさ

 経団連会長を務め、IHI東芝を再建し、行革のリーダーでもあった土光敏夫は、華々しい政財界での活躍の裏で、「目刺し」で夕食をすませるような「つつましい」実生活でも知られる。彼は「豪邸に住んで派手な生活をするような人は信用できない」とも言っていた。「つつましい」は「慎ましい」と書く(modestとかhumble)……一方、なるべくお金を使うまいと節約するのは「つましい(倹しい)」(frugalとかthrifty)」である。60歳の4分の1が「年金では暮らせず、貯金100万円未満」との調査結果(PGF生命2019年6月)もあるが、こういう場合は「倹しい暮らし」を強いられている……「つつましい」と「つましい」は字からして違うのにしばしば混同される。だが、似ているところも無くはない……アニメ『この世界の片隅で』のすずさんは、戦時中で物資不足のこともあり、色んなやりくりをして実に「つましく」生きた。でも明るさを忘れず高潔だった。それが「つつましさ」にも通じる。このやりくりとその才覚のことを京阪の商家あたりは「始末」という。京都あたりのおばんざいや保存食はみな「始末」の伝統だ……貧乏なジジババ同胞よ!金はなくとも「始末」の才覚を磨いて、明るく高潔に生き延びようよ。

爺飯85 もう「自炊」なんて止めよかな……

f:id:RIPEkun:20190827191310p:plain

中食・外食

 猛暑の外仕事で帰途につくが、グッタリしてメシを用意する気になれない。そんな日が続いた今月は、色んな「外食」「中食」に”浮気”しまくった……外食では、友人と行った新宿のトンカツや「王ろじ」(大正10年創業)の「とん丼(カツカレー)」(950円)は行列クラスの人気、また、先日、美人の創業ママが亡くなったが行きつけ「桂花」の「五香肉麺(ウーシャンローメン)」(1000円)は「太肉麺」に飽きた人におすすめ。近所の「なか卯」のランチ「冷やしうどん+ミニ牛丼」(500円)は地味に和める……そして中食はコンビニもの。セブンイレブンの「とみ田」の「冷やし味噌つけ麺」(550円)はリピートしたし、ローソンの「冷やし担々麺」(498円)は油断すると「中本」級に辛い。。さすが重慶飯店監修だ(あ、トマトとシメジは自分で追加したから付いてないよ)……今、一番品ぞろえ豊富でコスパが良いのが、スーパーなどで売っている袋入り冷やしつけ麺系(たいてい2人前で450円前後)。自分でベーコンや茹で卵、のりなどを用意した……いずれも結構、旨いのである。中・外食のこういう旨さは「添加物かも」と警戒するワシだが、それをクリアしている。もう、「自炊」なんて止めよかな。メリット・デメリットの秤が少しブレ始めているよ。