h.Tsuchiya

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かくして島は遠ざかる……

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 佐渡は、昨日、暴風雪警報とやらが発令されて、全島でサイレンがなったという。こんなことはめったにない。佐渡の連中のブログを見ても、雪景色ばかり。そして今朝はフェリー、ジェットフォイル含めて全便欠航だという。昨夜、新潟からの船が欠航して佐渡に来なかったのだから、折り返す船がないのだ。あったにしてもシケのために出られないだろう。新潟~佐渡間の航路には、大きくカーブしていて横波を受ける場所が2つある。

 10年前、東京と佐渡を往復しながら二人とも同時に入院してしまった両親の介護に通っていた。そして何度も佐渡と新潟で、足止めを食らった。何しろ、運航するかどうかは1時間前にならないと決められないというのだから、発着場を離れることもできない。むなしく諦めて急きょ、新潟市内のホテルを探し、翌日便に運を託して、無為の時間を過ごしたものだ。

 この時期、何かの用事で島から出かける人もいるだろう。農閑期のこの時期しか出られない人もいるし、受験生もいるし、新潟にしかない癌の病院に見舞いに通う人、役人、ビジネスマン。みんな声を荒げるでもなく、これしかない交通手段だと諦めているのだろう。これは佐渡人の特徴的な気質を作っていると思う。

 この時期の佐渡が島は、穏やかな時期の何倍も遠く感ずる。まさに海外。この雪で、無住の実家の傷み具合が気にかかるが、とても行く気になれない。行き帰りの予定も立てられない。
 
 佐渡から東京へ来る(帰る)時の、「逆雪国」の心理風景については、前にもどこかに書いた。山形生まれの作家藤沢周平も同じことを書いていることを織り込んだりした。「逆雪国」というのは、鉛色の空、吹雪の世界からトンネルを越えて関東に出ると、ウソのような温かさと青空が広がっていることのギャップだ。「こりゃ、差がつくはずだ」と妙に納得するし、田中角栄のような政治人間が、「山をぶち抜いてしまえ」と思いつくのも理解できるのである。賛同するかどうかは別問題だが……。


 かくして、故郷はどんどん遠くなる。心の中でもその影が小さくなる。