h.Tsuchiya

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人の評価も「晴れたり降ったり」

「雨予報なので休工」になりうれしい反面、予報が度外れして晴れたので、逆に稼げぬ悲しい気分にもなった。ともあれ時間はあるので、ウクライナ話から先送りしてきた「ナイチンゲール」のことを書きあげようとした。
 彼女はクリミア戦争の戦場で献身的に働いた「白衣の天使」というだけではなく、傷病者の多くが感染症で亡くなる因果を、レーダーチャートやグラフを駆使する統計学的手法で明らかにした。他にも医療衛生改革、専門教育による看護婦とその管理者の育成、ナースコールやナースステーション、リフトなどを備えた病院の設計にも多大な実績を積んだ。没後110年以上経つが、近代医療と看護術の偉人として尊敬を集めている……話はこんなWikiっぽい「偉人伝」で終わるはずだった。
 だが、友人保科さんがコートニー・パインというジャマイカ系ミュージシャンのことを教えてくれて、彼のWikiを見たら、「メアリ.J.シーコール」の像建立に尽力したとある。シーコールは、母がジャマイカ、父がスコッチの混血。母から学んだ薬草などを用いる民間療法の看護を身に着けた。そしてやはりクリミア戦争に看護師として従軍しようとしたが、ナイチンゲール率いる看護師集団への参加は拒否された。そのため自身で旅費を工面し戦場に行き、ナイチンゲールより前線に宿泊施設も作って敵味方関係なく看護した。その功績も時間とともに忘れられていたのだが、人種や性別への差別を見直す潮流の中で再評価されるようになった人だ。
 ナイチンゲールとシーコールが対立した形跡はない。ただ、ナイチンゲールゆかりのロンドンの病院にシーコールの像が建てられたことで、戸惑いを隠せぬ人は日本にもいる……人の評価も「晴れたり降ったり」だから難しい。
 自分は入院中、本当に看護師さんたちのお世話になった。また姪っ子を含め知人にも看護師さんが多く、心から「偉いなぁ」と思っている。心を向けるべきはその点だけで良いだろう。